皮膚科の医師求人(常勤・非常勤)ガイド

複数の薬剤を内服して皮膚症状を呈する高齢者への使用薬剤の聴取など

患者を診るうえで欠かせないポイント

皮膚疾患を診断する際には、指診と触診による現症の把握が重要であることは言うまでもありませんが、患者の現病歴や家族歴、職業歴、生活歴、既往歴の中に診断の決め手となる情報が隠されていることが少なくありません。

現病歴としては発症の時期、誘引、消長の有無(皮膚疾患は慢性に経過するものが多く、なかにはアトピー性皮膚炎や乾癬など、湿度や紫外線その他の環境因子の影響を受け、季節的変動を示すものが少なくない)、既治療(特にステロイド外用歴は重要で、ステロイド皮膚省が存在すれば治療方針は変わってきます)などの聴取が重要となります。

また、家族歴としては遺伝関係、家族内感染(性感染症では、パートナーを含めた治療が基本であり、また疥癬では家族全員の治療が必要になることが多い)など、既往歴(合併症)では特に糖尿病の有無の聴取が重要となります。

皮膚科の外来診療において、問診が最も有力なのは接触皮膚炎の診断です。特徴的な皮疹とその分布から、一瞥しただけでサクラソウ、ギンナン、マンゴーなどが原因として強く疑われる急性アレルギー性接触皮膚炎では、問診の際に被疑物質との接触を確認することが不可欠であり、それらによる皮膚炎の特徴的臨床像を熟知しておくことが前提となります。

また、慢性の接触皮膚炎では気付かずに、慢性湿疹という診断でステロイド外用薬が長期にわたって処方されているケースも少なくありません。セメントや皮革製品のクロム(製造業)、うるし(漆加工業)、パーマ液(美容師)などによる職業性慢性接触皮膚炎では、原因が究明されれば転職を余儀なくされることもありますが、接触皮膚炎はアレルゲンとの接触を避ければ完治しうる皮膚疾患であることを忘れないようにしましょう。

問診では使用薬剤の聴取も大切です。特に高齢者の場合、複数の薬剤を内服中にさまざまな皮膚症状が現れてくることが多いです。一見してまず薬疹が疑われる場合もありますが、なかには膠原病や水疱症類似の湿疹を呈していても、実は薬剤誘発性の可能性(エリテマトーデスや天疱瘡など)もあるので注意が必要です。露光部に皮疹が生じる光線過敏症にも、薬剤が原因の場合があるため、光線過敏を起こしやすい薬剤に関する基本的な知識が必要で、注意深い薬歴の聴取が求められます。

継続使用している薬剤ではなく、一時的に使用する頓服薬で誘発される薬疹もあり、その場合は不定期に皮疹の出現、消退を反復します。市販薬、なかでも総合感冒薬や鎮痛薬の一部が原因であることも多く、類似した成分を含んだ薬剤でも交叉反応によって同様の皮疹を誘発する場合もあるため、原因として可能性のある薬剤の成分をすべて割り出すことも必要です。また、近年では健康食品による皮疹の報告が増加しているため、それらの摂取歴を聴取することも重要です。

アトピー性皮膚炎の問診では、家族歴および既往歴で皮膚炎以外に気管支喘息やアレルギー性鼻炎、結膜炎など、他のアレルギー疾患の有無を聞いておくことも基本です。また、生活環境について詳しく尋ねることも重要で、治療に役立つことが少なくありません。ただし、患者が「○×アレルギーがあります」と言ったからといって、必ずしもそのまま受け取ってはいけません。「アレルギー」という言葉は患者に受容されやすく、好んで用いられる傾向にありますが、原因(アレルゲン)が同定されていないケースがほとんどですので、用語の使用には慎重を期すようにしましょう。

 
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